「日本の安全保障をどうする?」 

2010/12/31

 10月28日(木)東神戸薬局3階会議室で、兵庫県原水協事務局長の梶本修史氏を講師に迎えて九条の会.ひがしなだ主催の学習会「日本の安全保障をどうする? 〜日米安保条約破棄後を見据えて〜 」が開かれました。聴衆は18名と少し寂しい状況でしたが、詳しい10頁に及ぶレジメを基にした講師の熱のこもった講演に、参会者一同大きな感動を得て散会しました。
 梶本修史氏の、戦後65年にわたる安保体制を中心とした日米関係の変遷、沖縄の基地問題、核廃絶を目指す市民運動の前進の三つの点を中心にした講演の要点はおよそ次のようでした。

安保体制の原点(広島・長崎と沖縄)と日米同盟の変遷

*45年の沖縄地上戦と広島・長崎への原爆投下。ポツダム宣言受諾による敗戦と米軍の全面占領。51年のサンフ ランシスコ条約による形の上での独立と旧安保条約の成立。日本はアメリカの戦略のための一大軍事拠点化。
*自衛隊の発足と60年の新安保条約の締結。米軍の日本駐留の目的は「極東の平和と安全」という地理的規定  があった。形だけの「事前協議制」と「密約」の抜け穴。

*72年の沖縄本土復帰と「基地の中に沖縄がある」ような米軍基地の現状。

*普天間基地問題 : 95年の米兵による少女暴行と基地反対の県民大集会。96年のSACO(沖縄における基地  及び区域に関する特別行動委員会)最終報告で、海上施設の要求と引き換えに普天間基地返還に合意。06年  辺野古にV型滑走路の建設とグァムへの要員8000人、家族9000人の移転を合意。09年民主党鳩山政権成立と  「国外か県外へ」。10年の日米共同声明で「名護市辺野古への移設」明記、菅内閣も踏襲。9万人の県内移設反 対集会。

*日米同盟 : 「同盟」とは軍事的共同関係のこと。戦後、安保条約締結などではこの言葉を 一切使用できなか った。81年、鈴木首相がレーガン大統領と交わした「共同声明」で初めて公式に「日米同盟」と明記。90年代の   安保再定義と97年の新ガイドライン、98年の「周辺事態法」制定で安保の地理的概念が拡大。01年の日米共同  声明で「世界その他の地域」のための「ゆるぎない日米同盟」を謳いあげた。9・11のテロ以降、小泉首相は「地球 規模での日米同盟」を謳い、一連の戦争協力法、「テロ対策特措法」、有事法制などを強行。06年の日米共同声 明で「新世紀の日米同盟」と、初めてこの用語が共同声明のタイトルになった。10年、民主党のマニフェストに「日 米同盟の深化」が謳われた。

*安保で日本は守られていると言う安保抑止論の大嘘 : 在日米軍の46%は侵略(“殴りこみ”)専門の海兵隊。 82年のワインバーガー国防長官は米上院議会証言で「沖縄の海兵隊は日本防衛の任務を持っていません」と明 言。「米軍再編」により自衛隊は米軍の補完勢力として米戦略に組み込まれ、米軍の指揮の下で自衛隊が海外  展開する体制が作られている。

*経済的にアメリカ言いなりの仕組み : 安保条約第2条で「締約国は、その国際経済政策における食い違いを除 くことに勤め、・・・」=日本の経済政策をアメリカのそれに合わせられた ⇒ 日本の貿易の自由化、「新自由主義  路線」の導入、「構造改革路線」の押し付け、などなど。94年よりアメリカから毎年「年次改革要望書」が届き、そ  れ基づいて郵政民営化などの日本の経済政策が組み立てられている。91年から10年間で430兆円の公共投資を 行うと言う公共投資基本計画は90年の日米構造協議でアメリカから要求されたもの。95年から13年間で630兆円 の公共投資に拡大。

*軍事費の際限のない拡大 : 安保条約第3条で軍備増強の義務付け。米軍駐留のための諸経費6,670億円の 負担。条約上義務のない「思いやり予算」は、78年からの32年間で6兆円突破。約5兆円の軍事費には、イージス 艦1隻1,400億円など無駄が多い。

*「日米同盟の深化」 : 民主党のマニフェストで始めて登場。「日米同盟を基軸に」の枠組み堅持、「核の傘」(核 抑止」の立場を維持。自衛隊の海外派兵の拡大や「安保防衛懇報告」での集団的自衛権の行使禁止、武器輸出 禁止三原則、「基盤的防衛力構想」(専守防衛)などの見直しを謳うなど、民主党政権は軍事大国化を推進してい る。

沖縄県民の闘いと、「核兵器廃絶」への世界的なうねり

*沖縄県民の闘いと世論 : 10.1.24名護市長選挙で移設反対の稲峰市長誕生。10.4,25知事を初め全市町村長 が参加した基地反対の9万人の県民大集会。徳之島で住民の6割の1万5千人を集めた基地移設反対集会。1   0.9.12名護市議選で移設反対派圧勝。県民世論=辺野古移設反対84.1%、安保条約は平和友好条約に54.7%、 破棄13.6%、海兵隊駐留必要なし71.2%。

*沖縄経済の基地依存率は07年現在でわずか5.3%。県内の全ての基地を撤去すれば、経済効果は現在の2,2倍 に、雇用は2,7倍に、雇用者の年間所得は2.1倍に(沖縄県議会事務局)

*軍事同盟は解体・凍結が世界の流れに : 機能している軍事同盟はNATO、日米、米韓、米豪のみ。60年代の 52各国(人口の67%)から31カ国(人口の16%)に。

*核兵器廃絶運動の前進 : 85年「核兵器全面禁止・廃絶を要求するヒロシマ・ナガサキからのアピール」。93年 の国連総会で非同盟諸国が核兵器廃絶決議案を始めて提案、米国の反対で採決と利下げ、94年同決議案採  択。05年NTP(核不拡散条約)再検討会議で核兵器保有国も含めて核兵器廃絶の「明確な約束」の合意。09年  国連総会で「核兵器条約の交渉開始を求める決議」採択、中国、インド、パキスタン、北朝鮮も賛成。10年NTP再 検討会議で、「核兵器のない世界の平和と安全を達成する」ことを「原則と目標」の第一項として決議、全ての国に「核兵器のない世界を」を達成する「枠組みを確立する特別の努力」を義務付け。核兵器反対の市民運動が世  界を動かした!。10年原水禁世界大会で、NTP再検討会議の成果の次のステップを明確化。原水禁世界大会  「国際会議宣言」⇒ 「いまや一握りの大国が世界を支配できる時代ではない。我々は、全ての国が国際法を尊重 し、対等・平等に役割を果たし、市民社会の積極的な貢献によって支えられる新しい世界の戸口にいる」、「…市  民の運動は、新しい世界を創る重要な担い手になろうとしている」


学習会の感想文(敬称略)

M.M 

 現役をはなれ久しぶりに”安保”の体系的な講演を聞き、改めて日本の進むべき道に確信を新たにすることができました。旧安保の成立時からの売国性や新安保以降の歴代政府の欺瞞性、民主党内閣のいう「同盟の深化」が示す自民党との同質性と混迷ぶりが極めて簡潔明快に解明されたお話の内容であったと思います。しかし残念ながら沖縄を除いては国内の安保廃棄の世論は未だ道半ばです。これには安保是認を基本とする国内メディアの世論誘導に起因するところが大ですが、廃棄を求める側の全国民を対象にした情報の発信や告発が単発・一時的で根本的に弱いことも否めません。なかなか大変なことですが、中央の安保破棄実委のHPの記事の更新頻度のアップや国民に判りやすいリアルな告発記事など編集にも一工夫が必要ではないでしょうか。(68歳・男)

九条の会.ひがしなだの学習会に参加して
石田健一郎 

 「日本の安全をどうする?」というテーマで、講師に兵庫原水協事務局長・梶本修史氏を迎えての学習会だったが、安保体制の歴史、変遷、本質を再学習する良い機会になった。レジュメと言うよりは、立派な資料を頂いて、後日読み返してみて改めて貴重な資料だと思った。問題は、梶本さんが冒頭におっしゃったが、この事実を国民の8割にも及ぶ戦争を知らない世代にどのようにして知ってもらうか、知恵を出さないといけないと思う。

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